【生薬の不思議な話 牡丹皮(ぼたんぴ)編】

3月20日は春分の日です。

春分の日の由来は、明治11年に定められた春季皇霊祭(しゅんきこうりょうさい)という祭日が始まりです。

春季皇霊祭とは、この日に皇室で行われる歴代の天皇・皇后・皇親の霊を祭る儀式のことです。

昭和23年7月20日に「国民の祝日に関する法律」が制定されるときに、「春分の日」と改められ、「自然をたたえ、生物をいつくしむ」国民の祝日とされました。

ところで、春分の日には、「ぼたもち」を食べる習慣がありますね。

「おはぎ」は秋分の日に食べますが、どう違うの?という疑問を持つ人もいるかもしれません。

実は「ぼたもち」と「おはぎ」は食べ物としては全く同じ物です。


では、なぜ呼び方が違うのでしょうか?

「ぼたもち」は漢字で書くと「牡丹餅」、「おはぎ」は「お萩」。

“牡丹”は『春』に咲く花、“萩”は『秋』の草花。

つまり、季節に合わせて呼び方を変えているのですね。

さて、この「ぼたもち」の由来になった牡丹ですが、生薬としても使われているのをご存知ですか?

牡丹の樹皮は牡丹皮(ぼたんぴ)といい、消炎・鎮痛・駆瘀血(くおけつ)作用があります。漢方薬では、婦人薬として有名な桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)に配合されています。


牡丹といえば、「立てば芍薬、座れば牡丹、歩く姿は百合の花」という美人を花で表現した言葉がありますが、元々は生薬の用い方を例えたものと言われています。

気が立っている女性には、気持ちを落ち着かせたり、筋肉のこわばりを和らげたりする作用のある「芍薬」

すぐに座りたがる女性は、血の巡りが滞っている「瘀血(おけつ)」が原因である場合があり、その場合は瘀血を改善する「牡丹」

歩く姿がふらふらし、精神不安、不眠などの症状を持つ女性は、精神安定作用のある「百合」

このように症状に合わせた生薬の用い方を表す言葉だったのです。

牡丹は別名「富貴花(ふうきか)」と呼ばれ、その名の通り美しく大きな花を咲かせます。

4月から5月が見ごろの地域が多いようです。

花のひとつひとつは3~4日と短命なので、ぜひこの時期に牡丹園などを訪れてみてくださいね。


【再春館製薬所 公式ブログ】おうち漢方

『おうち漢方』は再春館製薬所の公式ブログです。 漢方というと、専門的なこと?難しい?ちょっと私にはわからない? でも、漢方の考え方は、古くから日本の風土や暮らしに密着し、ずっと前からの日本人の知恵、とでも言い換えられるほど、私たちの生活や日常に根付いているのです。だからこそ、私たちは肩ひじ張らず、毎日の生活に役立つ「漢方」の知恵を、わかりやすくお伝えしていきます。