【生薬の不思議な話し 阿膠(あきょう)編】

台風の被害、大丈夫でしたでしょうか。

被災された皆様が一日も早く穏やかな日常生活を取り戻せるよう、心から祈っております。



皆さまは○○の秋と言えば、何を思い浮かべますか?

食欲の秋、スポーツの秋、読書の秋、芸術の秋、など様々な楽しみ方があります。

今回は芸術の秋、中でも書道に関係するお話を書きたいと思います。

書道で使用する墨ですが、何から作られるかご存じですか?

墨の原料は煤(すす)と膠(にかわ)です。煤は松の木を燃やしたものや、植物油を燃やしたものなど様々です。膠は動物の骨や皮のコラーゲンから取ったもので、ゼラチンのようなものです。これらの煤に膠を加えて墨を作ります。膠は煤の粒子同士をくっつけて形を保つ役割や、煤を紙の繊維に接着させる役目を果たします。


そんな膠の一種で、生薬としても使われるものがあります。

「阿膠(あきょう)」といい、ロバの皮を煎じて作ります。墨の成分としての利用は少ないかもしれません。

中国の医薬に関する有名な著書『重訂本草網目啓蒙』の中で小野蘭山という人の解説によると、中国山東省の東阿井、阿膠井、阿井と言われた井戸の水を使って作られたものだけを阿膠というそうです。

昔は大変高価だったため、宮廷美容として用いられ、限られた人のみが手に入れることのできる高級素材でした。

楊貴妃が美容のために使用していたことは有名で、文献にも残っています。

他にも西太后が不妊治療に使用し、後に無事出産するなど、阿膠は美容のみならず、婦人科系の病気によく用いられてきました。

阿膠を含む漢方薬には温経湯(うんけいとう)があります。不正出血、生理不順、不妊症など婦人科系に効果が期待されます。

墨という身近なものにも生薬の仲間が使われているんですね。

膠を使った墨を使って今後の目標など書いてみてはいかがでしょうか。

【再春館製薬所 公式ブログ】おうち漢方

『おうち漢方』は再春館製薬所の公式ブログです。 漢方というと、専門的なこと?難しい?ちょっと私にはわからない? でも、漢方の考え方は、古くから日本の風土や暮らしに密着し、ずっと前からの日本人の知恵、とでも言い換えられるほど、私たちの生活や日常に根付いているのです。だからこそ、私たちは肩ひじ張らず、毎日の生活に役立つ「漢方」の知恵を、わかりやすくお伝えしていきます。